では、なぜ③専属専任媒介契約書ではなく②専任媒介契約書なのでしょうか?
その理由は次のとおりです。
③専属専任媒介契約書は「売主様ご本人すらも買主様を探すことが出来ない」と言うところが引っ掛かっており、お勧めしていないところです。そこまで厳密にする不動産会社もいないとは思っているのですが、兄弟、親戚、友達が欲しいと言ってきた場合ですらダメ?、または相談しづらい雰囲気になってしまいます。このような過剰な縛りは不要だと思っております。
更に、不動産会社の立場から考えても売主様が買主様を見つけてこられても仕事がなくなるわけではありません。重要事項説明書の作成と買主様への重要事項の説明、そして不動産売買契約書の条件(特約条項)の摺り合わせ、そして、その契約書の発行があります。
不動産会社の大きな役割の一つは、売却する不動産の「引渡しが済んだ後のトラブル防止」だと思っております。その為、重要事項説明や特約条項の打ち合わせを入念に行なう必要があります。私の持論になってしまいますが、兄弟や友達のように近い関係であればあるほど、逆説的ですが、他人と契約するのと同じようにちゃんとした方が良いと考えております。経験上、ちゃんと当たり前にした方がトラブルが少ない分、その関係に亀裂が入る可能性が断然少なくなります。適当にして、問題が起こると、仲が良い分、上手く行かなくなると言ったケースも多々あるようです。
①一般媒介契約書は、不動産会社の立場からすると力を入れづらいところがあります。複数の不動産会社が売主様と直接交渉するので、自社のお客様に積極的にその不動産を紹介して、やっとの思いでその不動産の良さをご理解頂き、購入申込書に署名押印を貰ってきても、「あっ!この間、契約してしまいました。お伝えしていませんでしたっけ?すみません!」等と売主様に気を使わせてしまったり、売買価格がいつのまにか不動産会社によって変わっていたりして、どうしても情報の統制ができません。
しかし、これは、もちろん売主様のせいではなく、契約の性質上致し方ないことと思っております。売主様は、もちろん不動産の売却活動の中身は分かりませんので、何に気をつけないといけないか分からないところがあります。更に、売主様は、ご自身のお仕事でお忙しいので、全ての不動産会社に売主様から情報の統制のためにこまめに連絡を取ることも不可能だと思います。もし売主様がその様なことを気をつけて頂けたとしても、複数の不動産会社から様々なリクエストや交渉が入り、そのどれが他の不動産会社に伝えるべきか伝えるべきでないかも分からないところがあると思います。それぞれの不動産会社の担当者の勘違いも出てきたりして、売主様も訳が分からなくなってしまったりするようです。例えば、ある購入希望者様との個別の値引交渉の結果OKした値引額がその後もそのまま許可を貰ったものとして、他のお客様にも値引後の価格で交渉をしてしまうといったことはあるようです。
また、これも契約の性質上致し方ないことなのですが、一般媒介契約書を結んでいない不動産会社様が、ネットの広告を見て、一般媒介契約書だから良いだろうと、直接、売主様に問い合せをする不動産会社様もいらっしゃいます。そこで契約も結んでいない不動産会社様が売主様と交渉を始め、もう何が何だか分からない統制の取れない状態になってしまうことがあります。
このように一般媒介契約書は、売主様が、鵜飼いのように上手に不動産会社を束ねて組織立てて動けるのであれば、上手く機能するのかもしれませんが、得てして不動産の専門家、それも別々の会社の人々を上手に統制の取れた状態を維持することは、非常に難しいことだと感じております。
その為、不動産会社としては、気をつけないと、お客様(購入希望者様)の信用を失ってしまうといったことが多々起こりえますので、余り「前のめり」に一般媒介契約の不動産にかかわると火傷をすると言った印象が拭えきれません。「前のめり」というのは、自社のお客様に積極的にその不動産を勧めると言ったことです。最悪の場合、お客様からちゃんと預かってない商品を勧めてたのか!と思われ、信用を失ってしまうといったことが起こるので、結局出来ることは、用心深く、問い合せがあったお客様にだけ、受け身的にその不動産を紹介すると言ったスタンスにならざるを得ない所があります。この状態はあまり良い状態とは言えません。
以上のような考えから、私としては個人的にですが、このブログをご覧になっているお客様には、不動産を売却する際は、信用できる不動産会社様を1社を選び、専任媒介契約を結び、その不動産会社を窓口にして、全ての情報を統制して貰うことにより余計なトラブルを防止し、安全な取引を行なって頂きたいと思います。
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